にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第三十六章


3ヶ月、経った。

時は、11月だった。

亜美は、見違えるように痩せた。どくとるマンボウが、処方した新薬のせいもあるだろう・・・。

体力が、徐々に徐々に回復し、作業所が休みの日には、またDEPTにも参加できるようになっていた。

しかも、今度は土曜の午前でなく、火曜日の夜に。・・・これは桂さんの後押しだった。

「夜でも、A教会なら、危なくないですよ。駅からすぐですし、私、あの辺で働いてましたから・・・。」

実際最初、夜6時の列車に乗るのには、亜美にはかなりの勇気が要った。が、A教会は、実際繁華街の近くではあったが、駅前の書店の並びで、尖塔が奇麗なところだった。

分かち合いは、きっちり7時からだった。もっとも、メンバーは半分以上土曜とだぶっている。

ある夜。

亜美は、妙にくたびれた格好で、床に座り込んで話を聞いている青年を発見した。・・・ここのところ、DEPTは盛況で、椅子が足りないのだった。

彼は、真っ赤なストールを首に巻いていたが、皆の話を聞くのも辛そうにしていた。

その次の火曜も。次の火曜も。

A教会のDEPTのフェローは、駅前のケンタッキーフライドチキンでするのが、普通だった。

亜美は、例の朱実さんと、あとハンナさんという初老の女性と、主に話していたが、その夜は、赤いストールの青年が、声高に話しているのが、どうにも気になった。

「俺さ、それで、時計屋勤めてるの・・・。心理学、大学でやってたから、お客の心理はすぐに分かる。そこでどう、客に割って入って、売るか、ね・・・。」

(この人・・・働いているんだ)

「それで・・・詩も書くよ」

彼は、ふいに亜美の方を向いて言った。「あんた、詩、好き?」

「私・・・少しだけ」

「意外」

ストールの青年は、携帯を出すと、画面を亜美に突き付けた。「どう?この詩」

『優しさをいつも

君は左手にぶらさげてるから

右利きの僕はいつも助かってる

でもほんとは右利きの君に頼みごと

どうか僕の前でだけ内緒で

これからも左利きでいてくれない?』

亜美は、何と言っていいか分からず、つぶやいた。「格好いい」

「私も・・・昔、1個だけ書いたのが残っているんだけど」亜美も、携帯をもぞもぞ検索すると、青年に見せた。

『桜ちるちる

さくら散る

男のわがままも

女の自分勝手も

みんなかくして

桜散る』

青年は、ぼそっと呟いた。「可愛い。・・・君、メルアド教えてくれない?」

亜美が、携帯と悪戦苦闘していると、青年は言った。「赤外線ポートって、ない?」

言われるままに2つの携帯を、重ね合わせると、ふっと情報は通じた。

「さようなら」

「さようなら」

もう、ケンタッキーおじさんは、サンタクロースの扮装をしているのが、帰りがけに分かった。・・・赤いストールは、交差点を斜めに渡ると、人ごみに消えて行った。

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