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籠の鳥ーJAILBIRD-

第四十一章

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「俺は、人に危害は加えていない・・・。ただ、家の中のものを蹴散らしたんだ。警官が4人来た・・・」

「その程度?」亜美は返した。「家なんか、警官が4人と救急車が来たわよ」

「呆れたお嬢さんだ・・・」瑛一は、少し調子を取り戻したようだった。「電話、してもいい?・・・カラオケボックスでガンガン音楽かかってるけど」

「いいわよ」

携帯から聞こえる、瑛一の声は、メールよりずっと脅えていた。

「姉貴が・・・。帰省した姉貴二人が、『お前に母さんは任せておけない』って言うんだ。・・・それはないだろう?」瑛一は、半分泣いていた。「もう、店に行けない」

「やくざになったら承知しないわよ」亜美は、はっきり言った。「店にはばれてないんでしょう?」

「やくざになりたくないよぉ」瑛一は、火のついた子どものように泣き叫んだ。

「仕事して、瑛一・・・。仕事してれば、いい服が買えるでしょ?それで、ちょっと食事を奢って、映画館で手を握れば、いい女がほいほいついてくるでしょ?だから仕事、やめないで。・・・もっとも、全然いい女じゃないかぁ・・・あははは・・・」

「言いたいこと、言うねぇ」瑛一は、ようやく手すりに掴まり直したような声で、にやりと言った。

亜美は、心底ほっとした。(よかった・・・元に、戻ってる・・・)

「明日、何とか店まわすよ」

「大丈夫?」

「大丈夫さ・・・もう、家帰るよ・・・。帰りたく、ないけど」

「そうして」

電話は、切れたが、亜美はその晩はさすがに眠れなかった。・・・早朝になって、「frosted glass」の事を思い出し、夢中で書きこんだ。

「あなたと会えて

ハピネス

時計の針よ止まれ

ハピネス

もっともっと逢いたい

こんな人に出会えた幸運に

ハピネス・・・」

12月31日。

あくる朝。「frosted glass」には、瑛一のこんな詩があった。

「あなたが夜更けにひとり

カフェでささやいたうた

わたしが毎日流す

この朝の音楽より

このこころに響いた

今日も私のオーケストラが

ゆっくり開演に向け動き出す」

(よかった・・・立ち直ってる)

夕方まで、亜美は携帯に張り付いていた。ぴったり7時半に、メールが来た。

「何とか、終わった・・・。」

「おめでとう」亜美は、万感の想いを込めて言った。

「ありがとう・・・。だけど、あの家には、もう帰りたくないよ」

亜美は、忙しく頭を巡らした。「私の家に、泊めてあげたいけど・・・父がいるし、第一そこから1時間かかるわ。・・・元旦に、会えない?」

「よし、分かった。大晦日はネカフェ難民するか」

「うん・・・大丈夫?」

「だいじょぶさ。紅白見ながら、メールしような、亜美」

初めて、名前で呼ばれて、亜美は嬉しかった。・・・その晩は、遠距離紅白歌合戦で暮れた。・・・やがて、除夜の鐘が鳴った。

「聞こえるか、亜美?」

「こっちでも・・・」

「亜美がいるだけで、俺は幸せだ」

1月1日。

桜色のニットと、グレイの膝丈スカートで、亜美は、U市の駅前で瑛一を待っていた。

瑛一は、びっくりするほど立派なスーツ姿と鞄で、しかしほとんど千鳥足でU駅に現れた。「おまたせ」

亜美は、黙って頷いた。(これじゃ、神社にお参りどころじゃないわ・・・)

ある決心をした亜美は、瑛一を連れ、駅から少し引っ込んだ、ある場所を目指して、先に立って歩いて行った。瑛一は、驚かなかったがただ言った。「いいの?」

「いいよ・・・」

『ホテルベルサイユ』という、名ばかりの安ラブホの門を、二人はくぐった。
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