にがくてあまい午後

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籠の鳥ーJAILBIRD-

第四十三章


・・・亜美は、もう作業所にはほとんど顔を出していなかった。その代わり、仕事帰りの瑛一と必ず電話した。

深夜に3時間、携帯ごしにお互いに歌を歌っていたこともあった。瑛一は、ビートルズとユーミンが上手かった。亜美が、沢田研二の「時の過ぎゆくままに」を歌うと、瑛一は言った。「エロいな。でもいい」

「疲れてない?」

「いや、遠距離恋愛だもの」瑛一は答えた。「この程度、当たり前」


そんなある日。

瑛一は、風邪をひいた。いや、正確にはインフルエンザで寝込んだ。

「あはは、愛の病かな」

「え?」

「あの、キャンディのせいだよ。・・・亜美、お前まだ少し咳出てたろ」

「うん・・・ごめんね」

「新型だ。2~3日店は休みだな」

それから、何とはなしに二人は映画の話をした。

「『ラスト・ラヴァーズ』って知ってる?」

「いや、知らない」

「あの、女優さん好きだって言ってたから・・・出てるわよ」

その晩。

亜美は、苦しげな電話を受け取った。

「亜美・・・」瑛一は、うなされていた。

「どうしたの?」

「見たんだ・・・『ラスト・ラヴァーズ』」瑛一は、泣いていた。

「あれは、俺だ・・・あんなドラマ、作っちゃいけない・・・」

「どうしたの??」

瑛一は、苦しそうに言った。「俺は・・・何でも暴力で解決して来た。誰にでも、優しくしたいといつも思ってる・・・それなのに・・・最後は」

「・・・・・」

「最後は、女に暴力をふるってしまう」

亜美は、半分泣きながら言った。「瑛一は悪くない・・・。家の、親父だって、人を窓際に飛ばしたり、若い時は女中を妊娠させて棄てたり・・・。みんな、そうやって生きてる」

「亜美」

「瑛一は、不器用なだけよ・・・。皆が生きているように生きのびて、何が悪いの?」

「・・・少し、落ち着いた。ありがとう亜美」

電話は、切れた。

(これで、よかったんだろうか)

(なにか、よくない予感がする)

亜美の家の周りの銀杏の木が、ざわざわと強風に揺られて、音を立てた。雨がざあっと振って来た。亜美は、耳を押えた。

(13階段だ)



注・13階段。ミーティングの規則を無視して、異性関係を持つこと。俗に、「死刑台への階段」とも呼ばれる。
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