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籠の鳥ーJAILBIRD-

第七章

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3日後、亜美はサイトウさんと、クリニックに向かっていた。

「先生が、よくものの分かった方で本当によかった事。でも、私とクリニックに行って、どうなさるおつもり、亜美さん?」

「少し黙ってて。考えを整理したいの」

あの、暗い部屋での3日間が、嘘のように空は晴れ渡っていた。

診察室で、ドクターは聞いた。

「お父さんに、ナイフを振り回したって、その程度?」

「(その程度?その程度って、どういう意味だろう。)はい」

「亜美ちゃん、取り替え不安って知っているかな」

「いえ」

「赤ちゃんの時に、病院で他の子供と取り替えられてしまって、ご両親が、まるで血の繋がっていない別の人間に対するような、敵意をぶつけてくる。そんな感じがすることはない?」

ある。あった。と、亜美はぼんやり思いだしていた。出生時の、母親の、乳飲み子に乳を与えている写真が、どう考えても、母親の顔でないような気がするのだ。

沈黙している亜美に、どくとるマンボウは言った。「お大事に」

帰りに、亜美はいつものレストランで、鶏のクリームスパゲッティを、サイトウさんと一緒に食べた。

「あらまぁ、亜美さん、こんな高いものをご馳走になって」

「いいのよ、サイトウさん。それより、買い物に付き合ってくれない?」

貯金は、もう帰り道の銀行で、ほとんど定期にしてあった。でも、ひろきさんが予言した通り、どうしても買いたいものが出来たのだ。

「まぁ、素敵な服なら、いくつも持ってらっしゃるじゃありませんか」

「そうじゃないの。普通の、夏服が欲しいの」

45RPMの店の前で、亜美は立ち止った。濃いピンクと、モスグリーンと、青の花柄のワンピースが目にとまったのだ。

「これは、いいものですよ亜美さん。綿だから、洗濯機で洗えますし」

「そう。じゃ、これを買うわ」

そんなに高価な普段着を買うのは、亜美は初めてだった。いや、普段着と言うものをそもそも、買うのが初めてだったのだ。

亜美の母親は、小学校低学年までは服を手作りしていたが、亜美が高学年になって、胸が膨らみだしてから、洋裁をいやがるようになった。そして、母親と一緒に、既製品の服を買いに行った想い出が、亜美にはひとつもない。

「・・・この子、いやらしいわ。この年で、ブラが要るなんて」亜美の母親が、吐き出すようにそう言ってから。

亜美は、かぶりを振って、その高価な綿のワンピースを買う事にした。サイトウさんは、ため息をついた。

「よくお似合いですわ。よくお似合いですとも」

そして、デパートの1Fで、亜美は初めて、この服に合わせて緑色の夏のサンダルを買った。
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