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籠の鳥ーJAILBIRD-

第八章

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その1ヶ月後、亜美は、郊外のファミレスでひろきさんと会っていた。

ひろきさんは、痩せ形でよく笑う人だった。しかし、とんでもないぼろ車でやって来た。

「ごめんね、これ代車なんだ。事故っちゃって、ちょっと」ひろきさんは、すまなそうに言い訳した。

嘘かな、とちらっと亜美は思ったが、そんな事はどうでもよかった。それより、車の中のきちんと整頓された様子や、ひろきさんの陽に褪せたTシャツが、亜美は気に入った。

ただ一つ、亜美を不安にさせるのは靴だった。ひろきさんの靴は、亜美が見慣れた、先のまるい靴ではなかった。亜美が時々行く、美容院のヘアメイクさんの靴だった。先の尖った靴。魔法使いの靴。

それが、亜美がこの青年に対して感じる、唯一の不安であり、また生理的嫌悪感だった。

「やめろよ、お姉ちゃん。ネットで知り合った人と会うなんて、とんでもないよ」

北海道に住む、唯一亜美の携帯に、返信してくれる、弟の忠告を振り切って、今、こうして初めて、好きな男の人と食事しているのだ。

何故、私に、こんな事が出来たかしら・・・?

「カルボナーラでいい、亜美ちゃん」

「うん」

むしろ、ひろきさんの褪せたTシャツは、亜美を謙遜させた。亜美は、今まで、お金と言うものについて考えた事がなかった。・・・だが、この人は。この、褪せたTシャツから抜き出た、逞しい腕で、それだけで毎日の糧を稼いでいるのだ。

亜美は、自分の45RPMの綿のワンピースが、つくづく恥ずかしくなった。これを買うお金は、全部父親から、あの大嫌いな父親からでているのだ。

ひろきさんは、亜美のそんな思いとは裏腹に、45RPMのワンピースが気に入ったようだった。

「亜美ちゃんはいいなぁ。可愛いなぁ。」

「そんなことないよ」

「俺、馬鹿だろ。・・・以前、結婚詐欺の女に騙されて、300万円払っちゃったことあるんだ。なんだか、かわいそうになっちゃってさ」

「ふぅん」

「亜美ちゃんはいいなぁ。いい、お嫁さんになりそうだ」

「そんなことないよ」

亜美は繰り返した。そんなことないよ。

その夜、やや興奮した亜美は、遥さんとチャットした。遥さんは、メンタルヘルスの住人ではない。少女漫画のカテから、知り合ってメールを交換した人だ。遥さんは養女で、養父母から酷い虐待をされた人だと聞いている。・・・亜美に、「AC」という単語を、初めて教えてくれたのは、遥さんだった。

遥さんは、開口一番、こう言った。

「危ないね、その男。やめたほうがいいね」

「どうして?」

「日本刀、って言うのは、どこかのヤクザの息子だろ。それに、アル中って、治る病気じゃないよ。私、義父がそうだったから、よく知ってる」

「ごめんなさい、思い出させて・・・」

「いいよ。今、私には娘がいるし仕事もある。でも、言うよ」

「うん」

「ヤクザはダメだよ。・・・特に、世間知らずの、亜美ちゃんには、ダメだ。DVになるよ」

そう、カキコすると、遥さんはふっとログアウトした。亜美は、呆然とデスクの前で立ち尽くしていた。
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