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籠の鳥ーJAILBIRD-

第九章

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その夜、ひろきさんからメールが来た。

「亜美ちゃん、元気ですか。俺はちょっと、親父の手伝いで明日は忙しいんだよ。じゃね。」メールには、ひろきさんが下宿で飼っているという、熱帯魚の写真が添付してあった。

亜美は、ベッドにうつ伏して、ひろきさんの焼けた肌を思い出した。それからおもむろに、自分の体の中心部に手を触れた。

何度も、体を折り曲げた後、亜美はベッドの中で泣いた。

サイテイだ。

サイテイだ。

私は、あのヤクザの人より遥かに人間として、劣る。あの人の、寝ている布団も、食べているお弁当も、あの写メの熱帯魚も、全て、TAXYの運転をして、嫌いな客に頭を下げて、夜は洗車をして、自分で得たものだ。

私は、何一つ自分で得たことがない。このベッドも、このPCも、全部全部親から与えられたものに過ぎない。

だから、私は、軽蔑されるのか。

亜美は、疼く体を抱えて激しく泣いた。

次の朝、まだ眠そうに髪をとかす母親の部屋を、ずかずかと亜美はノックした。

「何よう、亜美ちゃん」

「ちょっと、話があるの」

「入りなさい」

母親の部屋は、散らかり放題だった。しかし、今日は構ってはいられない。

「あのね、お母さん」

「気持ち悪いわね。何?」

「あのね。・・・私、やくざの人を好きになったの」

「あら、そう。じゃ、その人の部屋に、お味噌汁でも作りにいらっしゃいな」

亜美は、改めてこのエイリアンのような母親を、まじまじと見つめた。この人は、何を言っているのだろう。何が、言いたいのだろう。

「やくざだよ。危ないよ・・・」

「でも、あなた、その人の事、好きなんでしょう」

亜美は、この母親の首を絞めたい衝動に駆られつつ叫んだ。

「そうよ。好きよ。好きよ。大好きよ・・・ひろきさんは、私の事分かってくれる。・・・私、ひろきさんが、好き」

「何を言ってるの。おやめなさい」

「いや。いやあ」

「やめて頂戴」母親は、いつの間にか泣いている。・・・この人は妖怪だ、と亜美は思った。

亜美は、どうしたらいいのか分からなくなる。この人といると、いつもそうだ。

その夜、亜美はわざと父親と母親の会話を盗み聞きした。・・・簡単だ。キッチンが、独立しているのだから。

「亜美がそんな事を・・・」

「どうしましょう、あなた」

「勝手にさせなさい。亜美が、片付いてくれるなら、ヤクザでもなんでも、この際よろしい。・・・好青年と言う可能性もある」

「だけど、あなた、亜美は夢中なんですのよ。もし、財産でも取られたら・・・」

「私を信用しないのか、お前は。・・・嵯峨家の名誉にかけて、その男にはびた一文もやらんよ。・・・亜美には、出て行ってもらう」

「安心したわ、あなた・・・」

亜美は、震えた。・・・このままでは。このままでは。・・・自分の味方は、この家庭には誰もいないのか。
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